蒲公英草紙 常野物語 / 恩田陸

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)



常野物語というのは、「常野」という不思議な力を持った一族の関わるお話の語られるシリーズです。
と言っても連続した物語ではなく、主人公も時代も異なっています。


蒲公英草紙は、19世紀末、明治時代のある山村を舞台に、主人公の少女峰子の回想という形で語られます。
昔の物語を語るようなやさしい文体が、明治の時代の雰囲気を想像させてくれます。


永遠に続くと思われるような少女時代、槙村家の病弱なお嬢様との交流の中でゆったりと流れる時間に、世界大戦という激動に向かう時代の波が影を落としていく様は、淡々とした語りと相まって切ない想いを起こさせます。


静かに語られる、変わりゆく時代を生きた人生が、切なさ、やさしさ、懐かしさを感じさせてくれます。