無双



「母親の買ってきた服を着ているヤツ」
というのは、よくダサいことの象徴のように言われます。


突然告白しますが、ぼくは今でも母親の買ってきた服を着ることがあります。


お金のない学生時代、ぼくは家の近くの商店街にある、おばちゃん向けのブティックでよく服を買っていました。
ブティックて!っちゅう話ですが、男性向けのSHOPで、おっ!と思うような服は、必ずと言ってよいほど高くて買えなかったのです。
その点、住宅地の商店街にあるおばちゃん向けのブティックというのは異常なお値段で服が買えるのです。
500円のシャツ、2000円のジャケット、700円のマフラーなど。
当然靴やパンツは履けないのですが、トップスに関しては、肩幅の狭いぼくは重宝したのでした。


当たり前ですが、おばちゃん向けですので、男が着れるような服というのはかなり探さねば見つかりません。
なので、母が買い物に行くときには、ついでによさげなものがないかチェックしてもらったり、買い物に付いて行って、一緒に見てまわり、「買うて買うてー」とマザコン息子よろしくねだるのです。


そんなサノバマザコンなぼくも、今では男性向けSHOPで服を買うだけの稼ぎがありますので、おばちゃん向けのブティックに行くこともなくなりました。
しかし、そのときの名残で、今でもたまに実家に帰ると言われるのです。


「これなんぼやと思うー?○○円やでー。なかなかええやろー。あんた着る?着ぃへんかったら私着るけどー。」
「おっ、ええやんええやん。着る着るー。」


・・・。
28歳のおっさんとその母の会話とは思えません。


うん、なんていうか、非モテとか、そういう以前の問題だな、と思いました。