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ぼくには3歳下の弟がいました。
学年では3歳下でしたが、ぼくが3月生まれ、弟は4月生まれでしたので、実質2歳の差です。


全然似ていない兄弟で、兄弟だと言うといつも驚かれていました。
身長こそほぼ同じでしたが、ぼくは薄い顔、弟は濃い顔、ぼくはヒョロヒョロの体、弟は骨太のしっかりとした体、ぼくは論理的で冷静で器用な性格、弟は情緒的でおおらかで不器用な性格。
まるで表と裏のような二人でしたので、小さい頃はよく喧嘩もしましたし、自分にはない弟の才能を妬んだりしました。
しかし、中学生になったぐらいには、その正反対の相手を互いに尊敬し、めずらしいぐらいの仲のよい兄弟になっていました。


弟の気持ちは何もいわなくてもわかっているつもりでしたし、弟がぼくの気持ちをわかってくれているという安心感が常にありました。


ダメ人間なぼくですが、それでも弟はぼくのことを慕ってくれていましたし、尊敬もしてくれているようでした。
そして、弟は優しい性格ですので、ヒョロヒョロのぼくをいつも心配してくれていました。
そんな弟の優しさに、ダメなぼくは甘えっぱなしでした。


しっかりした体に濃い顔の弟と、ヒョロヒョロの薄い顔のぼくですので、最近は初めて会った方には大抵、弟のほうが兄だと思われていました。
ぼくがアホなことを言っては、弟がたしなめるように突っ込む、というのが最近のぼくらのスタイルで、実際中身の方でも弟の方が兄のような感じでした。




明日弟は弔われます。
顔を見ても、いつもと同じ顔で、おい起きろ、と言うとうるさそうに眠ろうとする姿が見えるような気がします。
むしろ泣きはらしたぼくの顔の方が死人のようです。
涙というのはいくら流れても尽きることがないことを知りました。


おかしなもので、普段あれだけアル中なぼくなのに、まるでお酒を飲もうなどという気にもなりません。
飲むとよけいにやりきれなくなりそうで。


ほんとうにやりきれない。
ほんとうに悔しい。
なんで弟が。
これからなのに。
こんな優しい、こんな真っ直ぐなやつが、ほんとうに幸せな人生を送るべきじゃないんですか。