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まるで正反対だったぼくらですが、おもしろいと思える笑いのツボや、許せないと思う倫理観など、コアの部分では同じだったように思います。
それは社会に適応するのが下手だということにも言えました。


就職難の時代、ぼくも弟も、なかなか自分をアピールすることがうまくゆかず、鬱々とした日々を過ごしていました。
ぼくは親のコネによって、のうのうと小さなソフトウェア会社に就職しました。
弟はといえば、最終まで残った挙句、コネの人にポジションを取られて落とされるなど不運が続き、すっかり自信をなくしていました。


ぼくはコネで入った会社でそこそこ実績を出し、ある程度の信頼を得るようになっていました。
弟はコンピュータが好きでしたので、うちの会社に来る気はないか?と聞くと、期待と照れくささの混じったように、採ってくれるならがんばるよ、と言いました。


既卒というのは就職活動では決定的に不利ですが、会社では新しい人材を探していましたし、兄であるぼくが実績を出していることからいけるのではないかと思ったのです。
しかし、実際には年齢とフリーターであることを理由に、会ってもみずに断られてしまいました。
就職希望者が山ほど来る大企業ならまだしも、うちのような小さな会社が人材を獲得するときに、会ってもみずに断るというのは何様のつもりでしょう。
このときぼくは今の会社の将来に決定的な不安を感じ、こんなくだらない会社に入ることはない、という判断を下してしまったのです。


このときぼくはもっと上に対して推すべきだったのです。
悔やんでも悔やみきれません。
断られたことを伝えると、弟は、そうかー、しゃあないなー、と軽い感じで応えましたが、内心の落胆は小さくなかったでしょう。


自分の実力ではない理由で拒絶されるというのは、通常の精神であれば傷つきます。
純粋で真っ直ぐだった弟の心の痛みは如何ばかりだったでしょうか。