インディアナ、インディアナ / レアード・ハント 柴田元幸[訳]

インディアナ、インディアナ

インディアナ、インディアナ



インディアナの農場に住む、精神を病んでいるらしいノアという名の老人。
彼が流れのままに思い起こす記憶の断片のように、切れ切れのエピソードや、挿入されるオーパルという女性からの手紙が、時間軸を離れて幾重にも積み重なり、ぼんやりとした全体像を織りあげています。


時折訊ねてくるマックスという男との不思議なやりとり、無神論者の父親ヴァージルとのユーモラスな会話、敬虔なクリスチャンである母ルービーの逸話、そしてオーパルからの手紙が、一見脈絡なく並べられ、静かに、音のない記憶のように静かに語られます。


そして、すべて読み終わった後、そこに織りあがっていたものが、また、綴られている一遍一遍が、完全な愛と、それを失った悲しみ、インディアナの自然の美しさと、純粋なものを引き裂く世界の無情だったことがわかります。


涙の出る程美しく完成された小説です。