夜鳥 / モーリス・ルヴェル 田中早苗 訳

夜鳥 (創元推理文庫)

夜鳥 (創元推理文庫)



前世紀初頭のフランスの作家モーリス・ルヴェルという人の短編集です。
江戸川乱歩夢野久作などのいた「新青年」に掲載され、人気を博したそうです。
読後に戦慄を覚えるような、強烈な短編群です。


不気味で怪奇な雰囲気は、エドガー・アラン・ポォに似ていますが、ポォ程幻想的で概念的な文章ではなく、より現実的で、どん底にいる者の人生の哀しさや、欲に駆られたものの悲劇、暗い感情に飲み込まれた者の話など、そこに描かれる人間の感情や人生というものに肉薄した文章です。


田中早苗さんの訳も素晴らしく、古い言い回しなども、文章の雰囲気を高めるのに一役買っており、予想以上に面白い本でした。