黄色い雨 / フリオ・リャマサーレス

黄色い雨

黄色い雨



段落の始めを一文字上げにした不思議な構成。
短めにまとめられた一篇一篇が詩のような美しさを持つ文章。
そんな文体で、滅び行く山村に最後に残された男の最後の日々が淡々と描かれています。


すべてを失いゆく村で、亡霊とともに過ぎ行くの男の日々は、その瞬間瞬間の体験が、写真のスライドショーのように音と動きを失くし、今起こっていることと記憶の境界が失われてゆきます。
時間の流れが記憶と混ざり合い、沈黙という音の中で、光の下では色彩は舞い散るポプラの葉と流れる雨の黄色が支配し、太陽が沈んでは夜の闇がすべてを覆い尽くします。


物語が一貫して絶望的な悲しみ、喪失感を語り続けるなかで、にも拘らず、不思議なほどの美しさを感じます。
人間の切なる祈りのような、迫るような荘厳な何かを。


本当に、奇蹟的なまでに「表現」というものをした小説なんじゃないでしょうか。
すべての本読みにオススメしたいです。