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報せを受けてすぐに病院へ向かったのですが、結局駅からタクシーで向かう間に、先に向かっていた母からの電話で悲報を聞くことになりました。


話を聞いてみると、建物の3階から転落したというのです。
100m程離れたところから目撃した人がいたそうで、3階の手すりのところにぶら下がるように摑まっていたとのことでした。
いったい何があったというのでしょうか。


自衛隊の内部の警察の方が検死を行ったのですが、結果、死因は落下して地面に叩きつけられたことによる脳挫傷ということでした。
傷は側頭部と鎖骨部に、落下時のものと思われる打撲傷と、足に擦り傷、そして、手すりに摑まっていたためか、指に血豆ができていたということでした。


何か納得できない点が多すぎます。
地面はコンクリートではなく、土だったそうで、3階の手すりに摑まっていた人間が落ちたぐらいで、そうそう死ぬような怪我をするものでしょうか。
自殺をするような動機も考えられませんし、自殺をしようという人間が、手すりに摑まったりするとも思えません。


警察は一応の調査は行ったようですが、やはり組織の内部のことだからか、通り一遍のことを調べた程度だったのでしょう。
結果は「過失」による転落死、ということでした。


何ですか、「過失」って。
結局何もわからないまま、ということです。
隊内部でも緘口令がだされているようで、このまま何があったのかわからないままになってしまうのでしょうか。


本当に悔しいです。
摑まっている弟を頭に浮かべるたび、手を差し伸べてやれない自分の無力さと、弟の恐怖を思って叫びが漏れます。


ずいぶん前から何度も除隊の希望は伝えていたにも拘らず、書類等の手続きをなかなかしてくれていなかったようで、前日にようやく手続きをするということになり、月末には除隊ということになっていたと聞きました。
もっと早くしてくれていれば。
いろいろと考えてしまいますが、もう弟は帰ってきません。


先月のぼくの誕生日に、弟がメールをしてきてくれました。
「お互いもう若くはなくなってきたけど人生楽しもうや」


何をしても弟は帰ってきませんが、弟の無念を思うと、何があったのかうやむやになってしまうのが悔しくて堪りません。